ビブリオバトル 2023はぴの陣 開催記録

令和5年7月28日(金曜)「ビブリオバトル 2023はぴの陣」が中央図書館で開催されました。

 

今回は近年最多の6人がバトラーにエントリー、全員中学生のバトルでした。まずは中央図書館長から、応援のメッセージが贈られました。

では、バトルを始めましょう!

①『空白小説』 氏田雄介 作 小狐裕介 作 水谷健吾 作 ワニブックス

こちらの本の背表紙、何か不自然に間が空いてますよね。この背表紙を本屋で急に見つけたら、とても気になりませんか。

この本は、書き出しと結びの文が初めから決まっていて、この空白の中、この中を変えることによって、書き出しと結びの文の意味が大きく変わり、物語は予想できない方向へ展開していきます。

この本の魅力は3つあって、1つ目は、この空白の中を変えるだけで、物語はハッピーエンドにもバッドエンドにも無限大に広がるところ。2つ目は、短時間でたくさんの物語を読むことができるところ。3つ目は、3人の著者、それぞれの世界観を楽しめるところ。

あなたは空白の展開を予想できますか?

はぴの陣 バトラー1人目の写真

②『ぼくらの七日間戦争』 宗田理 作 角川書店

はぴの陣 バトラー2人目の写真

皆さん、学生運動と聞いて、何を思い浮かべますか。もしかしたら、東大安田講堂事件を思い浮かべるかもしれません。この事件の15年後を予想した物語が『ぼくらの七日間戦争』です。

中学1年生の英治は、夏休みに何をするか仲間と考え、子どもだけの楽しい世界、解放区を作ろうと思いつきます。そして、悪い大人たちをやっつけようと考えます。

ですが、自分たちしかいないはずの解放区に、実は大人が1人住んでいたのです。英治たちはその老人をどうするか考え、追い出さずに皆で一緒に戦うことにします。

途中、クラスメイトの柿沼君がさらわれますが、解放区の外にいる女子たちの力も借り、力を合わせ、ミステリを解決していきます。ぜひ読んでみてください。

③『Another』 綾辻行人 作 角川書店

皆さんは、1人のクラスメートを<いないもの>として、無視したり仲間外れにしたりすることについて、どう思いますか。

反対だと思う方にお聞きします。もし、そうしなければ、自分、家族、友人に危険が及ぶとしても、反対だと言い切れますか。

この小説はミステリなのですが、怪しい人が多すぎて、私は最後まで犯人を予想できませんでした。主人公の祖父母の家にいる九官鳥は誰を思って鳴いているのか、表紙に描かれた少女の目の色が左右で違うのはなぜか。最後まで読み切った時、散りばめられたフラグが、パズルのピースのように重なり合って、すっきりとした爽快感に包まれます。

怖いのに面白くて、手が止められなくなる本です。

はぴの陣 バトラー3人目の写真

④『人間失格』 太宰治 作 新潮社

はぴの陣 バトラー4人目の写真

この小説の主人公、大庭葉蔵の人生には、太宰治の経験や心情が多く含まれています。

葉蔵は、酒好き女好き薬物中毒の三拍子を持ち合わせ、次第にとても悪いループに陥ってしまいます。酒や薬物のためにはお金が、お金のためには仕事が、仕事に集中するためには酒や薬物が必要。そんな自らに葉蔵は判定を下します。人間失格と。

そんな葉蔵ですが、実は女性にはすごくモテていたんです。人間不信を隠し、道化を演じ、常に笑顔で相手が喜ぶようなことをしていたんです。

葉蔵の人生は、なぜこのようになってしまったんでしょうか。彼の人生の先に何が待っているのでしょうか。

この本を読んだ後、皆さんはいろいろなことを考えさせられると思います。

⑤『八朔の雪』みをつくし料理帖1 高田郁 作 角川春樹事務所

私のおすすめは、食べる幸せが詰まったおいしい本、みをつくし料理帖です。この本は、江戸の町で料理を振る舞う女料理人、澪の物語です。澪の料理を口にした客は皆、至福の表情でうなずき合い、その姿に、読んでいる私まで、まるで好きなものを食べているかのように幸せな気持ちになれます。

料理の才能を持つ澪も、初めはうまくいきませんでした。大阪と江戸の味の違い、女料理人への差別など、様々な困難に直面しますが、根性と元気で乗り越えていきます。

しかし、一人で乗り越えてきたわけではありません。周りの人たちの支えがあってこそなのです。個性豊かな、たくさんの温かい人たちに囲まれて、澪は成長していきます。

ぜひ味わってみてはいかがでしょうか。

はぴの陣 バトラー5人目の写真

⑥『世界から猫が消えたなら』 川村元気 作 マガジンハウス

はぴの陣 バトラー6人目の写真

皆さんは、どうしても失いたくない大切なものはありますか?

この本は、愛猫キャベツを何よりも大切に思っている、30歳の郵便配達員の僕が主人公です。

ある日突然、僕は、悪魔から明日自分が死ぬことを告げられます。絶望する僕に、悪魔はある取引を持ちかけます。それは、世界から一つ、ものを消すかわり、一日寿命を延ばすというもの。しかも、消すものは悪魔が決めてしまうシステムなんです。

まだ生きていたいという一心で、電話や映画など、どんどんものを消していく僕ですが、消したものがいかに大切だったか、失ってから初めて気づくんです。そして、最後の取引は、世界から猫を消すこと。

自分の命よりも大切にしたいものがある人に読んで欲しい作品です。

 

6人全員の発表が終了し、投票タイムに入ります。全員が、“一番読みたくなった”1冊に投票します。
そして、一番得票が多かった本が“チャンプ本”になります。

集計が終わったら、いよいよ結果発表です。
チャンプ本は…

①の『空白小説』に決定!

チャンプ本を発表したバトラーに、中央図書館資料サービス課長から賞状と記念品の贈呈です。


はぴの陣 チャンプ本決定

バトラーからは喜びのコメントがありました。

参戦してくれた他のバトラーにも記念品がプレゼントされました。

最後は記念撮影です。


はぴの陣 記念撮影

こうして「ビブリオバトル 2023はぴの陣」は幕を閉じました。
観戦した方からは「とても面白かったです!みんな発表が上手で、ひきこまれました」「推したい気持ち(熱意)が伝わってきて、内容が気になるものばかりでした。楽しかったです!」との感想もいただきました。

今回発表したオススメの本は、令和5年11月発行の「はぴ」61号にも掲載します。
どうぞお楽しみに。
「はぴ」のバックナンバーはこちらから

(記録:「はぴの陣」実行委員)