バラのまちだより No.3

バラのまちだより No.3表紙

ノイバラ 日本在来のバラ

日本各地に自生しているノイバラは、初夏に真っ白な五弁の小さく可憐な花を咲かせ、ほのかな香りがあります。ところが、古代の人々は、花を愛でるよりは、トゲを厄介なものと嫌っていました。ノイバラは、現存する日本最古の歌集『万葉集』に「うまら」の名で登場します。

道の辺の 荊(うまら)の末(うれ)に 這(は)ほ豆の からまる君を 別(はか)れか行かむ
(巻二十 4352 丈部(はせつかべの)鳥(とり))

この歌は、防人として旅立つ自分を、荊(うまら)にからまる豆のように、愛する妻子が離そうとしない、という作者の心の嘆きを詠んだものです。このように古代の人々には、トゲのある枝がからまっている様子のほうが印象的でした。 奈良・平安時代になると、貴族たちは大陸から渡来したバラを薔薇(そうび)と呼んで、観賞するようになりましたが、その後も広く普及することはなかったようです。 この日本原産のノイバラは19世紀にヨーロッパに渡り、品種改良されるようになり、現在ある、様々な種類の祖先となりました。 日本で、今日のように多くの人に愛されるようになったのは、明治時代に入ってから。西洋文化の影響とされています。

参考資料

バラにまつわるこんな本はいかがですか?

~貧しくも心豊かな国で~

  • 「きみのためのバラ」 池澤夏樹著 新潮社

    混み合った電車内に放置された持ち主不明の荷物。テロの可能性を否定しきれない昨今、荷物から離れるために乗客をかきわけて隣の車両へ移動した主人公は、若い頃、一人旅のメキシコで同じように乗客をかきわけて進んだことを思い出す。そう、あのときは、1輪のバラを手に、先で待つ喜びに引き寄せられて進んだのだった…。

    旅の中のさまざまな出逢いを描いた短編集の中の一編。

~自分らしく生きること~

  • 「イングリッシュローズの庭で」 ミシェル・マゴリアン作 小山尚子訳 徳間書店

    舞台は1940年代のイギリス。主人公ローズはもうすぐ18歳、美人で優等生の姉ダイアナといつも比べられ劣等感を持つ文学少女。姉妹は戦禍のロンドンを離れ、3ヶ月間、海辺のコテージ「千鳥荘」で過ごすことになった。「千鳥荘」にはその昔、「狂人」と呼ばれた女性ヒルダが住んでいたという。

    偶然ヒルダの遺品や日記を発見したローズは、狂ってなどいなかったヒルダの真実を知り、ドラマティックなその人生に心を惹きつけられる。ヒルダの日記と、「千鳥荘」周辺の人々との交流を軸に、ローズの成長が描かれる。

    自己中心的なボーイフレンド、父親のいない子を宿した友人、フィアンセに裏切られた過去をもつ古書店主、外見だけでない自分を愛してくれる伴侶に出逢った姉ダイアナ…さまざまな愛の形に触れ、ときに悩み傷つきながら、自分らしい生き方と真実の愛を見つけていく。

~豪華な花々にひそむ不吉な影~

  • 「あの薔薇を見てよ ボウエン・ミステリー短編集」 エリザベス・ボウエン著 太田良子訳 ミネルヴァ書房

    さびれた田園地帯をドライブ中の男女。突然あらわれた、何百もの色鮮やかな薔薇に覆われた家に驚く。

    車が故障したため、2人はその家に助けを求めるが、住人は無表情な母親と病気で寝たきりの少女だけ、父親は行方不明だと言う。電話すら無い家に女を残し、男はガソリンスタンドを探すと言って出て行った。

    世間から隔絶された家の雰囲気、陰気な母子との会話、そして薔薇の恐ろしいほどの色彩と香りの中、妻がいる男に執着する女の心理は不安定に揺れる。男は戻ってこないのでは、自分はこの家に取り残されたのでは…?女の不安は杞憂に終わるが、少女の父親の行方に関する疑惑が不気味に暗示される…。

バラ・ことば・あれこれ

英語ではいろいろな言い回しの中にバラが登場します。

  • a bed of roses
    安楽な暮らし(ばらの花びらを敷いた床が由来)
  • be not roses all the way
    楽なことばかり、いいことずくめではない
  • come up roses
    万事うまくいく、すべてがうまくいく
  • fresh as a rose
    さわやかな魅力のある、清潔な魅力のある
  • gather (life's) roses
    楽なことだけをして生きる、楽をして暮らす
  • There is no roses without a thorn
    とげのないバラはない、楽あれば苦あり《諺》
  • under the rose
    秘密に、内緒で(昔はバラは秘密の象徴であった)
  • A rose is a rose is a rose
    それ以上でもそれ以下でもないことのたとえ。
  • smell like a rose
    (スキャンダルなどにかかわりながら)無傷ですませる

「ばらのまち」中央区…バラ園30周年

与野公園(中央区本町西)…昭和52年に整備されたバラ園に47種類・約2700株のバラが植えられ、毎年5月に開催される「ばらまつり」は大勢の人でにぎわいます。 「ばらのまちだより」No.1でご紹介した「アンネのバラ」は今年から与野公園でも見ることができます。