バラのまちだより No.25

バラの盆栽を育ててみませんか?

 さいたま市には、世界に名だたる盆栽町があります。盆栽では、野イバラ、照葉野バラ、山椒バラ、屋久島野バラなど、日本に自生する原種に近い小型のバラを多く扱います。 分類上は近縁種ですが、開花期が多少異なり、野イバラが最も早く咲き、屋久島野バラが、最も遅く咲くようです。一重の花が可憐な印象です。初夏に花を楽しんだ後に、花柄を摘まずにいれば結果して、秋には赤い実をもう一度楽しむことができます。

 また、バラ科の木の盆栽も多くあります。ウメ、サクラ、モモ、ボケ、カイドウ、サンザシ、チョウジュバイ、リンゴ、ズミ、ピラカンサ、イチゴなど、すべてバラ科の盆栽です。秋はバラ科の盆栽の植替えの適期、あなたも一鉢入手して、来春の開花を楽しんでみてはいかがでしょうか。

参考資料

日本原産の野生のバラ

 世界には約200種類のワイルドローズ(原種バラ)があり、北半球の温帯を中心に分布しています。日本各地にも自生している原種のバラが10数種あります。

 日本では、8世紀末に編さんされた「万葉集」に、「宇万良(うまら)」という名でバラが登場します。宇万良は、今も山野に自生しているノイバラだと言われています。ノイバラは、一重5枚の花びらがフワリと白く、とても可憐な印象のバラです。江戸時代には、小林一茶が「古里は西も東も茨(ばら)の花」とうたい、与謝蕪村も「花いばら古郷の路に似たる哉」と郷愁の象徴としてうたっていて、村落近辺の山野に咲くポピュラーな花の一つだったようです。

 日本原産のバラ、ノイバラやハマナスなどは1800年ごろに欧州に紹介され、フロリパンダ種やポリアンサ種といった現代のバラの品種の祖先になりました。ノイバラもその他の日本原産のバラも、一季咲きの一重の花で、花後の赤い実も野趣にあふれています。 素朴で清楚な趣のある原種のバラを、育ててみてはいかがでしょうか。

~ 日本原産の野生のバラの品種一覧 ~

●ノイバラ(野茨)Rosa multiflora ロサ・ムルティフローラ
 純白で5弁、平咲きの花(花径2.5㎝)には強い芳香がある。北海道から九州まで日本各地で見られる半つる性の落葉低木。

●ツクシイバラ(筑紫薔薇)Rosa multiflora adenochaet ロサ・ムルティフローラ・アデノカエタ
 九州と山口県に自生するノイバラの変種。ハート形花弁(花径3~5㎝)で、中心が白く淡紅の花は10以上集まり初夏遅くに咲く。

●ショウノスケバラ(庄之助薔薇)Rosa multiflora watosoniana ロサ・ムルティフローラ・ワトソニアナ
 世界で一番小さな花のバラで、花径は0.8㎝ほどの花が枝一面に咲く。江戸時代から栽培され、葉が細くバンブーローズともいわれる。

●テリハノイバラ(照葉野茨)Rosa luciae ロサ・ルキエ
 本州以西の磯海岸の斜面、河原などに這うように自生し、ハイイバラやハマイバラとも呼ばれる。葉に照りがあり、初夏に純白の花(3~4㎝)が房状に咲き、0.8㎝の赤い実が熟す。テリハノイバラの仲間には、モリイバラ(森茨)Rosa onoet var. hakoneensis・アズマイバラ(東茨)Rosa onoet varoligantha・ヤブイバラ(藪茨)Rosa onoei var. onoei・フジイバラ(富士薔薇)Rosa fujisanensisなど、いずれも白花のバラが各地に自生する。

●サンショウバラ(山椒薔薇)Rosa roxburghii normalis ロサ・ロクスブルギイ・ノルマリス
 富士・箱根地方に自生し箱根薔薇とも呼ばれる。淡紅色の広い5弁の花(花径2.5~5㎝)に、小葉が4~9対に連なり、山椒の葉に似る。日本と中国チベットに分布。樹高は5~6mに達する。

●タカネバラ(高嶺薔薇)Rosa nipponensis ロサ・ニッポネンシス
 紅の花(花径6㎝)でまるい葉先の小葉3~4対からなり、四国剣山・本州中部・尾瀬の高山に自生する。日本固有種。

●ハマナス(浜茄子)Rosa rugose ロサ・ルゴサ
 深紅紫の花(花径6~10㎝)で島根・茨城以北の海岸の砂地で自生し、日本以外でも東アジア北部に自生する。シロバナハマナス(白花浜茄子)Rosa rugose alba という白花に突然変異した種もある。

●カラフトイバラ(樺太茨)Rosa amblyotisロサ・ アンピリオティス
 別名ヤマハマナス、淡紅の花(花径5~6㎝)  で、国内は北海道・長野・群馬に自生する。

●コハマナス(小浜茄子)Rosa iwara ロサ・イワラ
 本州北部と北海道に自生し、ノイバラとハマナスが自然交配したと推定される。白花と淡紅の花(花径3㎝)とがある。

※ 記載は品種名、(漢字和名)、学名、学名読み 。

参考資料

夜空に咲く薔薇 “バラ星雲”

 実は、薔薇は夜空にも咲いているのです。

 その名も“バラ星雲”。天体写真に写すとまるで真っ赤な大輪の薔薇が咲いているかのように見えることから、この名前がつきました。いっかくじゅう座の額のあたりに位置する星雲です。

 いっかくじゅう座は、“冬の大三角”と重なるようにある星座で、日本では11月~2月ごろの夜に見られます。明るい星がないため見つけることが少し難しいのですが、冬の大三角は分かりやすいので、その中ほどに身をひそめる一本の長い角を持つ一角獣をイメージしてみると良いでしょう。

 バラ星雲の色鮮やかで美しい姿は、眼では感じにくい波長の成分が多いため、残念ながら肉眼だとほとんど見ることができません。いっかくじゅう座の付近を、広角レンズとカラーフィルムを組み合わせて長時間ガイド撮影することでその姿が浮かび上がってきます。

 バラ星雲の撮影にご自身で挑戦できない場合でも、図書館にある本でその美しい姿を目にすることができます。ぜひ手に取ってご覧ください。

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