バラのまちだより No.28
バラとゆかりのあるお寺「円通院」
別名「バラ寺」と呼ばれる、「円通院」(宮城県松島町)という寺院をご存知でしょうか。
観光地として有名な「瑞巌寺」のすぐ隣にある寺院で、仙台藩祖伊達政宗の嫡孫・伊達光宗を祀るため、1647(正保4)年に建立されました。
本堂の奥には光宗の廟所・三慧殿(さんけいでん)があり、国の重要文化財に指定されています。その殿内に安置されている厨子の扉に、支倉常長が西洋から持ち帰った日本最古といわれる洋バラの絵が描かれているのです。
また、その歴史にちなみ、境内の庭の一角には世界各国から集められたバラが植えられており、バラの咲くシーズンには参拝客を楽しませています。
所在地:宮城県松島町松島字町内67
TEL:022-354-3206
FAX:022-354-5447
参考資料
- 『仙台周辺のあるきかた-松島・山形 蔵王・平泉・花巻-(福袋大きな字の本)』 ゼンリン 2001年
- 『全国寺院名鑑 北海道・東北・関東篇 改訂版』 全国寺院名鑑刊行会/編纂 史学センター 1976年
- 『宮城ぶらり歴史探訪ルートガイド』 仙台歴史探見倶楽部/著 メイツ出版 2018年
かんじんなことは、目に見えないんだよ~星の王子さまとバラの愛~
1943年にニューヨークで出版され、1953年にはじめて日本語で翻訳出版された、サン=テグジュペリ作『星の王子さま』。今も世界中で愛されているこの童話には、作者のある愛が込められていました。小さな王子さまと、彼の愛するバラの花の物語を覗いてみましょう。
バラとの出会いと別れ
王子さまの住む星に、ある日、どこかから種が飛んできて芽吹き、美しい花を咲かせました。王子さまは大切に花を世話しますが、花は自分の美しさを鼻にかけて、あれこれと注文をつけ、王子さまを苦しめます。とうとう王子さまは、花にさよならを告げ、故郷の星を旅立ちました。
「ぼくは、あの時、なんにもわからなかったんだよ。あの花のいうことなんか、とりあげずに、することで品定めしなけりゃあ、いけなかったんだ。 (中略) ぼくは、あんまり小さかったから、あの花を愛するってことが、わからなかったんだ」
キツネの助言
さまざまな星を旅する王子さまは、やがて、たくさんのバラの花の咲きそろう庭に行き着き、世界に一つだけと思っていた自分の花が、実はただのバラの花であったことを知ります。草の上につっぷして泣く王子さま。そこへ、キツネが現れます。二人は時間をかけて絆を結び、仲良くなります。やがて訪れる別れの時に際し、キツネはもう一度バラの庭を見に行くように王子さまに勧めました。
「 (前略) それから、あんたがおれにさよならをいいに、もう一度、ここにもどってきたら、おれはおみやげに、ひとつ、秘密をおくりものにするよ」
かんじんなことは、目に見えない
再びバラの庭に行った王子さまは、姿形は同じでも、バラたちは星に残してきたあの花とは違う、と悟ります。水をやり、覆いをかけ、不平も自慢も聞いてやったあのバラだけが、この世に一つだけの花なのです。 戻ってきた王子さまに、キツネは語ります。あのバラをそれほどまでに大切なものにしているのは、バラのために王子さまが失った時間なのだと。キツネの明かした秘密こそが、次の言葉でした。
「さっきの秘密をいおうかね。なに、なんでもないことだよ。心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目に見えないんだよ」
バラのモデルは?
王子さまの愛した、美しくわがままなバラ。このバラのモデルは、サン=テグジュペリの妻・コンスエロといわれています。1943年、戦争に参加するための旅立ちに際し、彼は妻にこんな言葉を残したそうです。
君の小さなハンカチをおくれ。そこに僕は『星の王子さま』の続きを書く。物語の終わりに、王子さまはそのハンカチを王女さまにあげるんだ。君はもう棘のあるバラじゃなくなるだろう。いつまでも王子さまを待っている、夢の王女さまになるんだ。
コンスエロには、ある霜の降りた寒い夜、高価なリネンのシーツを地面に敷いてテントを作り、多くのバラを救ったことから、「彼女こそがバラ」とたたえられたというエピソードがあります。『星の王子さま』のヒロインがバラになったのは、もしかしてここに理由があるのかもしれません。
参考資料
- 『星の王子さま』サン=テグジュペリ/作 内藤濯/訳 岩波書店
- 『『星の王子さま』隠された物語』鳥取絹子/著 ベストセラーズ
- 『星の王子さまの恋愛論』三田誠広/著 日本経済新聞社
- 『バラの回想』コンスエロ・ド・サン=テグジュペリ/著 香川由利子/訳 文芸春秋
バラにまつわる絵本を紹介します。
『グリム童話 しらゆき べにばら』
バーバラ・クーニー 絵 鈴木晶 訳 ほるぷ出版
むかし、夫をなくしたまずしい女の人が、ふたりの娘と暮らしていました。娘たちは、庭に咲いている白バラと紅バラに似ていたので、「しらゆき」と「べにばら」とよばれていました。
しらゆきとべにばらは、家の手伝いをしながら仲良く暮らしていました。
ふたりともとても良い子で、おかあさんに本を読んであげたり、おかあさんの部屋にバラの花たばをいけたり、いつでも陽気に、よく働きます。冬になって、寒さをしのぎにクマが家にやって来ればやさしくもてなし、森や小川で悪い小人が困っているところに出くわせば助けてあげます。
ところが、クマは春になるといなくなってしまい、恩知らずな小人はふたりにちっとも感謝しないで、また面倒を起こすのです。
やさしいタッチと、バラ色のあたたかな色合いの絵が魅力的なグリムの絵本。