バラのまちだより No.4

バラのまちだより No.4表紙

ライムライト

「人生はすべて願望だ。意味じゃない。薔薇は薔薇になろうと望んでいる。」
(映画『ライムライト』より カルベロのセリフ)

このセリフは、映画『ライムライト』の1シーンで語られます。

チャップリンが演じるのは、老いて落ちぶれた、かつてのスターで道化師のカルベロ。 ある日、カルベロは自殺しようとしたバレリーナのテリーを救います。 彼はテリーのために薔薇の花を花瓶にいけますが、失意の底にあるテリーは見向きもしません。 そんな彼女にカルベロは心を込めてこのセリフを言います。 薔薇の花の美しさと、カルベロの優しさに、テリーは心を開いていきました。 このシーンの薔薇はモノクロ映画でありながら鮮やかで美しく、やがて再起し、エンパイア劇場のプリマドンナになるテリーの未来を投影するかのようです。 お互いを愛しながら、二人は結ばれることなく、老いたカルベロは、テリーが踊る舞台で息を引き取るのでした。

この映画が公開された1952年は、アメリカでは「赤狩り」現象が吹き荒れ、チャップリンも政治的に難しい立場にたたされました。 この映画のプレミアのため渡英する途中、ついに、自らに栄光をもたらしたアメリカに事実上、国外追放されたのです。 老いたカルベロの姿は、この当時のチャップリンのようにもみえます。

参考資料

バラにまつわるこんな本はいかがですか?

~過去にひそむ疑惑~

  • 「薔薇は死を夢見る」 レジナルド・ヒル著 早川書房

    豪華な薔薇園がある屋敷で妻子とともに穏やかに暮らすパトリック・アルダーマン。ある日、彼が勤める製陶会社の社長が警察を訪れ、アルダーマンは殺人者だと訴える。アルダーマンが屋敷を相続したのも順調に出世をしたのも、毎回その障害となる人物が都合良く突然死したためで、社長自身も二度、殺されかけたというのだ。

    言動は粗いが鋭い推理力をもつ警視ダルジールと、知性派の部下パスコー警部が活躍するシリーズの1作。警官への夢と不良仲間との板ばさみに悩む美少年見習い警官、彼に倒錯した想いを抱く部長刑事、複雑な友情で結ばれる容疑者と警部の妻たち、奔放で美しいアルダーマンの母、手当たり次第に女性に手を出す社長…周囲の人間関係が描かれるうちに、アルダーマンに関わる死の疑惑が、ひとつまたひとつと浮かび上がってくる。本当に彼は殺人者なのか…?

    著者は薔薇に造詣が深いようで、各部の冒頭には薔薇が登場する文学作品の引用が、各章の冒頭には様々な品種の薔薇についての解説が、それぞれ散りばめられている。

~家族3人の愛と闘い~

  • 「真紅のバラを37本」 高橋穏世(やすよ)著 新声社

    ある夏の夜、ふたりは出会った。ニーチェやサルトルについて情熱的に語る彼に心を奪われた彼女。彼女の誕生日にはプレゼントに愛の言葉と真紅のバラを添えて贈った彼。やがて結婚、質素だが幸せに満ちた暮らしの中、すぐに可愛い男の子を授かる。

    しかし、愛だけが輝いていた幸福は、永遠のものではなかった。1歳にも満たないうちに、息子が癌に侵されたのだ。危険な手術を経て、奇跡的に回復した喜びもつかの間、こんどは夫の癌が判明。さらに息子の癌も再発する。二人分の癌と懸命に闘う著者だが、息子は5歳11ヶ月で短い生涯を閉じてしまった。その2ヵ月後には夫も、37歳の誕生日を迎えることなく息をひきとる。

    ひとり残された著者だが、ともに力を合わせて闘いぬいた人生に誇りをもち、強く生きることを誓う。病床の夫に贈った37本の真紅のバラは、夫の人生そのもののように輝かしく立派だった。

~半世紀にわたる平和への歩み~

  • 「基地の島から平和のバラを 反戦地主・島袋善祐が歩いた道」 島袋善祐(しまぶくぜんゆう)述 宮里千里録・補記 高文研

    1945年4月、米軍が沖縄に上陸したとき、島袋氏は満8歳、もうすぐ小学二年生の新学期が始まるというときだった。家族とともに米軍に捕らえられ、収容所を転々とさせられる。自宅に戻ってからは農業や、ときには泥棒もして、逆境を生き抜いてきた。

    長年、反戦地主のひとりとして米軍軍用地の返還を求め続けてきた島袋氏。自営のバラ園でつくったバラを、毎年卒業式に近隣の子どもたち全員へ贈る優しい一面も持つ。その信念に満ちた半生を、ウチナーグチ交じりのユーモラスな口調で語る。

宇宙バラ ~スペースローズをご存知ですか?~

1998年10月~11月にかけて、宇宙飛行士の向井千秋さんらが搭乗したスペースシャトル「ディスカバリー号」にはミニバラの一種「オーバーナイトセンセーション」が積み込まれていました。俗に「宇宙バラ」(スペースローズ)と呼ばれているもので、「宇宙の無重力状態がバラの香りの生成にどう影響するか」調べる実験を行うために使われました。何種類もの花が候補にあがったなか、「世界中の人に愛されている」という理由でバラが選ばれたそうです。

十日間の飛行中に2輪の宇宙バラが開花しました。その香り分子を採取し、地球に帰還後、地上で咲かせたバラの香り分子と比較した結果、香りを構成する主要な三つの化学成分に際立った変化が現れており、宇宙バラは「より繊細でかぐわしかった」とのこと。

なお、この宇宙バラの枝から育てられた4株が2003年4月川口市に贈られ、川口市立科学館に植樹されています。

- 向井千秋さんに関する本 -

「ばらのまち」中央区…バラ園30周年

秋バラの季節になりました。町のあちこちで、たくさんのバラが咲いています。現在、与野公園ではバラ園活性化事業を行っています。3ヵ年計画(平成20年度完成予定)で、バラの移植・補樹、土壌入れ替え、盛り土などを実施しています。

少しずつ生まれ変わるバラの花々が楽しみですね。