バラのまちだより No.29
「ローズ・クォーツ」で幸せを呼び込む
「ローズ・クォーツ」は和名で「紅水晶」といい、別名「薔薇石英」ともいわれ、淡いピンク色をしているパワーストーンです。
その由来は「愛と美の女神」アフロディーテの石とされ、アフロディーテにささげられた薔薇から、この名がついたといわれています。産地はブラジル・マダガスカル・モザンビークなどです。特に品質がいいのがマダガスカル産で、まれに透き通るほどの透明度が高いものがあります。
日本では、透明度の高い石を「水晶」、透明度が低く濁っているものを「石英」といいます。「ローズ・クォーツ」は厳密にいうと、「紅石英」に分類されるものが多いようです。 このパワーストーンは『恋愛成就・美の象徴・自己愛』などに効果があるとされます。
薔薇のふるさとといわれる「愛と美の星《金星》(ビィーナス)を象徴する「ローズ・クォーツ」は、数多くの愛の石の中でも代表的な存在です。素敵な出会いや結婚を願う人はいつも身に着けていると良いといわれています。
『赤毛のアン』とバラ
『赤毛のアン』シリーズは、カナダの女性作家・L.M.モンゴメリによって書かれた長編小説です。日本では昭和27(1952)年に村岡花子によって初めて翻訳され、時代を問わず多くの読者から愛されてきました。
『赤毛のアン』は、孤児院からマシュウ・マリラ兄妹に引き取られたアン・シャーリーが、周囲の人々の愛情に支えられながら、生き生きと成長していく物語です。その中でバラは様々な役割を持って登場します。
ギルバートの振る舞い
「あんたが妖精の対話のあとでステージから走ってでたときに、あんたの髪からばらが一輪落ちたのよ。それをギルバートが拾って、胸のポケットにしまってるのを、あたし見ちゃったの」
学校の音楽会で大成功をおさめたアン。そんなアンに対して、友人のダイアナが、音楽会でのギルバートの振る舞いについて伝えます。愛と美の象徴であるバラを、心臓にもっとも近い胸ポケットにしまう――。そのロマンチックな振る舞いから、ギルバートがアンに好意を寄せている様子が伝わってくる場面です。
マシュウの愛したバラ
「あたし、きょうの午後、マシュウ小父さんのお墓にばらを植えてきたんです」
アンは夢見るように言った。
「ずっと昔に小父さんのお母さんがスコットランドから持ってきた、小さな白いスコッチローズの小枝を挿し木してきたんです。小父さんは、そのばらがいちばん好きだっていつも言っていました。棘だらけの枝に甘く香る可憐な花をつけるんですよ」
アンの成長を温かく見守ってきた養父のマシュウですが、ある日急逝します。お墓にマシュウの大好きだったスコッチ・ローズを植えることができたことに、アンが慰めを感じている場面です。 移民の国であるカナダ。マシュウの母がスコットランドから来たとあることから、マシュウ・マリラ兄妹がスコットランド系カナダ人であることが分かります。
バラを表現するアンのセリフあれこれ
「あら、早咲きの小さなばらが一輪咲いてるわ。美しいこと。あの花は自分がばらなことをよろこんでるにちがいありませんわね? ばらが話せたらすてきじゃないかしら。きっと、すばらしく美しい話を聞かせてくれると思うわ」
「いつか本に、ばらはたとえほかのどんな名前でもおなじように匂うと書いてあったけれど、あたしどうしても信じられないの。もしばらが、あざみとかキャベツなんていう名前だったら、あんなにすてきだとは思われないわ」
「それにまあこのこうしんばらといったら。まるで歌と希望と祈りがいっしょになったようね」
バラはアンが愛した花の一つです。独特の感性と言い回しで、バラを情緒豊かに表現しています。
ちなみに「いつか本に、ばらはたとえほかのどんな名前でもおなじように匂うと書いてあった」のセリフにある「本」とは、『ロミオとジュリエット』のことです。「バラのまちだよりNo.9」で取り上げていますので、是非そちらも読んでみてください。
『赤毛のアン』では、舞台となっているプリンス・エドワード島(カナダ)の豊かな自然を背景に、バラ以外にも多くの花が出てきます。“花”という視点から『赤毛のアン』を読み直してみると、思わぬ発見があるかもしれませんね。
参考資料
- 『赤毛のアン』モンゴメリ/著 村岡花子/訳 新潮社 2008年
- 『赤毛のアンへの旅-秘められた愛と謎-(教養・文化シリーズ)』松本侑子/著 日本放送出版協会 2008年
- 『赤毛のアンA to Z-モンゴメリが描いたアンの暮らしと自然-』奥田実紀/著 松成真理子/挿画 東洋書林 2001年
- 『図説赤毛のアン』奥田実紀/著 河出書房新社 2013年
バラにまつわる絵本を紹介します。
『わたしの庭のバラの花』
アーノルド・ローベル 文 アニタ・ローベル 絵 セーラー出版
がまくんとかえるくんでおなじみ「ふたりはともだち」の作者アーノルド・ローベルが妻のアニタ・ローベルとともに手掛けた作品です。
わたしの庭には、バラの花や、すっとのびたタチアオイ、まあるいオレンジいろのきんせんかに、おおきなチューリップなど沢山の花が植えられています。その中にある、たけ高いひまわりに隠れてふるえているのは、一匹の野ねずみです。
そこへやってきたのは、ちぎれ耳のねこ。ねこは、野ねずみを追いかけ、上品でしとやかなユリをおどかし、レースのようなはなびらのつりがねそうをダメにし、百日草をざわつかせます。そんな庭の騒ぎの中、目を覚ましたのは…
庭に咲く美しい花々を、何度も口ずさみたくなる積み上げ歌と、豊かな色彩で表した絵本です。