さらにスロヴァキアを知るために

ブラティスラヴァ世界絵本原画展のためのブックガイド

うらわ美術館で開催中の「ブラティスラヴァ世界絵本原画展 - 歴代グランプリ作家とその仕事」にあわせて、さいたま市図書館では、ブラティスラヴァを首都とするスロヴァキア共和国に関する資料をリストとしてまとめることにいたしました。 これは2007年の同展開催時に作成したものを改訂、補筆したものです。 このリストが、今回の展覧会をご覧になるうえでより広く深い鑑賞の手助けとなることを、そして、美術館にお越しの方は図書館へ、図書館にお越しの方は美術館へ、足をはこぶ一助となることを願ってやみません。

さいたま市図書館

このページの目次

掲載した資料はさいたま市図書館所蔵のものです。 本リストの資料の情報は、書名、著者・画家、出版社、出版年の順で記述しています。 資料が貸出中または最寄りの図書館に所蔵がない場合は、予約・取り寄せができます。 書名をクリックすると予約ができる画面に移動します。 このブックガイドはさいたま市図書館各館および美術館ロビーにて配布しています。 また、PDFファイル(467KB)をダウンロードできます。

スロヴァキアとはいかなる国か

ブラティスラヴァを首都とするスロヴァキア共和国。 かつてはひとつの国だったチェコ共和国とくらべると、日本人にはあまり知られていない国かもしれません。 「スロヴァキアとはいかなる国か」といえば…

国名 スロヴァキア共和国
人口 5,397,766千人(2007年)
国土面積 49,035k㎡(九州+高知県と同じくらい)
位置 ポーランド、チェコ、オーストリア、ハンガリー、ウクライナに隣接、日本との時差 -8時間
人種 スロヴァキア人85.8% ハンガリー人9.7% ロマ人(ジプシー)1.7%、その他チェコ人、ルテニア人、ウクライナ人など
公用語 スロヴァキア語
首都 ブラティスラヴァ、ドイツ語では プレスブルク、ハンガリー語では ポジョニュ

「これだけでは物足りない」とおっしゃる方のために、スロヴァキアとはどういう国か、そしてどのような歴史を背負った国か、教えてくれる本をご紹介しましょう。

「図説チェコとスロヴァキア」

薩摩秀登著 河出書房新社 2006

チェコとスロヴァキア2国の風景や建物にまつわる歴史を解説しています。 スロヴァキアにもブラティスラヴァはもちろん、小さいけれど歴史的に由緒のあるトルナヴァやコシツェ、レヴォチャといった地方都市、ヨーロッパでも屈指の名城といわれるスピシュ城など、魅力的な場所がたくさんあります。 ローマ帝国の時代から1993年に分離するまでの2国のあゆみを、豊富な写真とともに味わってください。

「読んで旅する世界の歴史と文化 中欧 ポーランド・チェコ・スロヴァキア・ハンガリー」

沼野充義監修 新潮社 1996

取り上げられている4つの国は、20世紀の初めまではハプスブルク家の領土、すなわちオーストリア=ハンガリー二重帝国の一部でした。 多くの民族が住んでおり、様々な文化が交錯した場でもあります。 その多様性を歴史から民族問題、芸術、さらには料理やお酒まで、様々な切り口で教えてくれるのがこの本。 ちなみに、スロヴァキアでおすすめのお酒はプラム(プルーン)の蒸留酒「スリヴォヴィツァ」というもので、「店で売っている薄く色の残ったものではなく、自家製で無色透明の二日酔いなど絶対にしない自然のものが最高」(p.305)とのことです。

スロヴァキアの人と風景

雄大に流れるドナウ河、マリア・テレジアゆかりのブラティスラヴァ城、中世から変わらぬ姿を保ち続けてきた数々の教会や旧市街…。 面積は日本の約8分の1程度の小さな国に、宝物のような美しい風景がつまっています。 なかでも首都ブラティスラヴァは、古き良きヨーロッパの香りを色濃く残し、街ぜんたいが観光名所、まるでテーマパークのような魅力に溢れています。

「チェコスロヴァキアめぐり カレル・チャペック旅行記コレクション」

カレル・チャペック著 飯島周編訳 筑摩書房 2007

チャペックが故郷チェコスロヴァキア各地の情景について自身のイラストを交えて描いたエッセイ集。 スロヴァキアについての文章は決して多くはありませんが、豊かな自然や美しい城などへの愛情が感じられます。

「エステルゴムの春風」

持田鋼一郎著 新潮社 1995

歌人で旅行作家の著者が、街や人々を知りたいと願って東欧諸国を旅した取材旅行記。 1993年の分離独立直前、チェコ人とスロヴァキア人の対立が激しいブラティスラヴァを訪れた「ブラティスラバ、事もなし」ほか、24章にわたり各土地での出会いや交流を描いています。 表題の章ではスロヴァキアのドナウ対岸、ハンガリーの昔の首都エステルゴムでの心温まるエピソードが綴られています。

「過去と未来の国々 中国と東欧」

開高健著 岩波書店 1991

1960年、30歳の著者が初めて海外に出たときの記録です。 スロヴァキアでは現地の批評家と文学談義を交わしたり安保闘争について鋭い追求を受けて苦しんだり… 当時の社会主義諸国の表情が、現地の人々との交流を通して描かれています。

「世界ゆったりトラム=旅物語」

秋山芳弘ほか文・写真 東京書籍 2002

現在の日本では数えるほどに減ってしまった路面電車ですが、世界を見渡すとまだまだ沢山の路面電車、トラムが走っています。 鉄道関係の著書を多数執筆している6人の鉄道好きによるフォト・エッセイです。 ブラティスラヴァ(本文中では"ブラチスラヴァ")を旅したのは高校教師で旅行作家の野田隆氏。 地下鉄などの無いブラティスラヴァではトラムが市民の重要な足となっており、旧市街の風景に溶け込んでいます。

「世界途中下車の旅」

櫻井寛著 PHP研究所 2002

車窓からの眺望を楽しみ、途中駅のホームで駅弁を買う… 超多忙な時代だからこそ気ままな途中下車を提唱する著者が、世界中の鉄道で途中下車の旅をする本。 ブダペストからプラハに向かう途中、ブラティスラヴァで途中下車。 あまり楽しい思い出ではなかったようです。

「写真紀行ロマンティック街道物語 遥かなるドナウの流れ」

三輪晃久著 グラフィック社 1997

中世の面影を今もとどめるロマンティック街道をあちこちと、車の走行距離にして18,000キロに及ぶ旅をして、写真と文章でまとめた本。 ドナウ河越しに眺めるブラティスラヴァ城と町の美しい写真が掲載されています。

「チェコスロバキアの民族衣装」

石山彰監修 恒文社 1983

レースや刺繍、カラフルな色彩が美しいチェコスロヴァキアの民族衣装。 チェコとスロヴァキアの違いだけでなく、地方によって実にバラエティーに富んでいます。 現地のカメラマンと執筆者による解説。

「チェコスロヴァキアの民族衣装 技法調査を中心に

中嶋朝子ほか共著 源流社 1987

現地の各博物館での取材と、日本の国立民族学博物館所蔵の衣装をもとに、地方ごとのデザインの違いや、素材や製作技法にいたるまで、詳細に研究した資料。 一部の衣装については寸法まで入った解説図もあるので、見ながら実際に作ることもできそうです。

スロヴァキアのいま

1993年1月1日の「ビロード離婚」によって独立国となったスロヴァキア共和国。 独立してからも様々な変化があるようです。

「チェコとスロヴァキアを知るための56章 第2版

薩摩秀登編著 明石書店 2009

チェコとスロヴァキアを全56で紹介した本。 2003年に初版が発行されました。 翌2004年EU加盟、2009年ユーロ導入(スロヴァキアのみ)とその後の変化も大きく、政治・経済に関する章は大幅に加筆・訂正されています。

もっと知ろうよ!EU 第1巻 | 第2巻 | 第3巻

山崎智嘉著 汐文社 2005

「ヨーロッパへの回帰」を政治的スローガンに掲げたスロヴァキアの具体的目標の一つがEU加盟でした。 スロヴァキアが加盟した翌年に刊行されたこのシリーズは、児童向けですのでEUの仕組みや歴史を簡潔に知ることができます。 第3巻の「EUの国々を知ろう!」の章でスロヴァキアが取り上げられています。

「ジプシー・ミュージックの真実 ロマ・フィールド・レポート」

関口義人著 青土社 2005

スロヴァキアには多くの民族がおり、民族問題は現在でも大きな政治的テーマです。 ロマ(ジプシー)もそうした民族のひとつ。 この本は音楽をよりどころとして、ロマの起源とされるインドからはじまり、ヨーロッパ各地のロマの生活を紹介してくれています。 スロヴァキアのロマについてはあまり多くのページが割かれてはいませんが、それでもこの国のロマが歴史的に虐げられてきたことと同時に、現在のロマをとりまく社会的・政治的状況などを教えてくれます。

※関連書籍 「東欧の20世紀」 高橋秀寿、西成彦編 人文書院 2006

スロヴァキアと音楽

スロヴァキアの首都ブラティスラヴァは、"音楽の都"ウィーンからわずか55kmという恵まれた立地条件のためか、オーストリアやハンガリーの音楽家とゆかりの深い場所です。 ベートーヴェンと並び称された作曲家・ピアニストのJ.N.フンメル(1778-1837)ほか多くのすぐれた音楽家が生まれ、スロヴァキア・フィルをはじめとするオーケストラが活躍するなど、クラシック音楽の豊かな土壌があります。 それにもましてスロヴァキアの音楽を特徴付けているのが、民俗音楽です。 スロヴァキアは18世紀後半頃からロマ(ジプシー)たちの楽団の一大拠点でした。 また農民たちが伝えてきた民謡は、バルトークやコダーイといったクラシックの作曲家の心を捉えるほど魅力的なものです。

(参考「音楽でめぐる中央ヨーロッパ」 横井雅子著 三省堂 1998)

「チェコ、スロヴァキア、ハンガリー、ポーランド ガイドブック音楽と美術の旅」

音楽之友社編集 音楽之友社 1995

音楽と美術の視点から4つの国をめぐるガイドブック。 スロヴァキアのページでは、コンサートホールを内蔵したブラティスラヴァ城、フンメルの生家を保存したフンメル記念館、ベートーヴェンが<<月光>>を作曲したベートーヴェン記念館などが紹介されています。 巻末には音楽・美術史の概説と、音楽祭や劇場の案内、音楽留学の手引きもあり、実際に現地で音楽を楽しみ、あるいは学ぶ役にも立ちそうです。

「スロヴァキア熱 言葉と歌と土地」

石川晃弘著 海象社 2006

伝説によると、最初のスロヴァキア人に神は「言語」と「土地」とともに「歌」を与えたといいます。 個性的で多様性に富む民謡が数多く残されており、スロヴァキアの人たちは仲間うちの飲み会やパーティーはもちろん、公式な文化行事の挨拶代わりにも、選挙演説や議会でも民謡を歌うほど歌好き。 日本で親しまれている歌「おお牧場はみどり」の元はチェコやスロヴァキアの民謡だそうです(ただし、歌詞はチェコバージョン、スロヴァキアバージョンそれぞれ、日本で歌われているものとは大違いです。その違いは、本書でお確かめください)。 社会学博士の著者が、実際に滞在し現地の人々と飲み歌い交流した体験をもとに、生活者の視点から描く詳細スロヴァキア論。

「バルトーク音楽論集」

ベーラ・バルトーク著 岩城肇訳 御茶の水書房 1992
『バルトークの世界』講談社 1976 の改題新装版)

作曲家バルトーク(1881-1945)の文章をあつめたもの。 バルトークは、1893年から1903年の間を音楽の勉強のためブラティスラヴァ(当時はハンガリー語でポジョニュとよばれていた)で過ごしています。 その後世界的な音楽家への道を歩んでゆくバルトークですが、その彼がつねに重視していたのが東欧の民族音楽でした。 バルトークはハンガリーやルーマニアなどの農民から直接民謡をききとり、採譜したり録音したりして記録し分析しており、そのなかにはスロヴァキアのものも含まれます。 ここに収録されているのがそのレポート。 400曲もの民謡をそらで歌ってみせる農婦が登場し、バルトークを驚かせています。

ハンガリーの農民たちの間では、百曲近くの歌のレパートリーを持っているような農民を見つけることは全くまれなことですが、スロヴァキアの農民たちの間では、たった一人の農民から、といってもたいていは農婦ですが、百五十曲から二百曲もの曲が採譜できることなどは全く普通のことです。 つまり、スロヴァキアは、民俗音楽の実に豊かな産地なのです。(p.154)

「うぐいすとバラ エディタ・グルベローヴァ、半生のドラマとその芸術」

ニール・リショイ著 久保敦彦訳 音楽之友社 1999

スロヴァキア出身のソプラノ歌手エディタ・グルベローヴァ(1946-)。 ブラティスラヴァ音楽院を卒業し、中部スロヴァキアの小さな町の劇場と専属契約を結び活躍していた彼女は、やがてウィーン国立歌劇場で華々しくデビューを飾りますが、その裏には西側諸国を敵視する故国との辛い別れがありました。 波乱に満ちた半生が彼女自身の言葉を織り交ぜて語られる「そのあゆんだ道」と、歌唱技術や魅力について役柄や公演ごとに解説した「その現象学」の二部構成。

スロヴァキアのスポーツ

スロヴァキアで盛んなスポーツといえばまずウインタースポーツ。 とくにアイスホッケーはチェコスロヴァキア時代から世界的に有名で、現在でも世界中で多くのスロヴァキア出身の選手が活躍しています。 サッカーも盛んで、浦和レッズにも90年代半ばにはルルやミロといった選手が在籍していました。 またテニスでは、史上最年少で4大大会を制覇したマルチナ・ヒンギス、杉山愛とダブルスでコンビを組むダニエラ・ハンチュコワ、そして先日の全仏オープン準々決勝でマリア・シャラポワを破ったドミニカ・チブルコワ(準決勝でサフィナに敗退)などを輩出。 そんなスロヴァキアのスポーツに関する本をご紹介します。

「スキー発祥思い出アルバム」

レルヒの会、上越市立総合博物館編 ベースボール・マガジン社 1988

テオドール・エドラー・フォン・レルヒ(1869-1945)はブラティスラヴァ出身の将校で、はじめて日本にスキーを伝えた人物。 日露戦争後の日本の研究のため来日したレルヒ少佐は、新潟県の高田(現在の上越市)に滞在、高田13師団長で、スキーの重要性を考えていた長岡外史と出会い、1年ほどのあいだにスキーの技術をこの地に伝えました。 この本はその「スキー発祥の地」で編まれたもので、レルヒと長岡外史との交友や、当時のスキーの様子を写真で見ることが出来ます。 眼をひくのは当時ストックのかわりに1本の長いさおを使っていたことですが、さらに驚かされるのが、カイゼルひげをこえた長岡外史の「プロペラひげ」の立派さでしょう。

「サッカーの敵」

サイモン・クーパー著 柳下毅一郎訳 後藤健生解説 白水社 2001

ハンガリーのクラブチームがスロヴァキアに遠征し、スロヴァキアのクラブチーム・スロヴァンと対戦、ハンガリーのファンをスロヴァキアの暴徒鎮圧舞台がフーリガンとみなして襲撃する事態に発展しました。 時はまさにビロード離婚を間近にひかえた頃。 スロヴァキア大統領になるメチアルは国内に住むハンガリー人への差別をあらわにしており、それがサッカーにまで影響を与え、さらにメチアルはそれを政治的なPRに利用します。 次いでおこなわれる第2戦はスロヴァンがハンガリーへ乗り込む番。 はたして第2戦は無事におこなわれるのか?

1992-93シーズンのUEFAチャンピオンズ・カップ第1回戦が取り上げられた「一匹オオカミのスキンヘッドが国を救う-ハンガリー対スロヴァキア」ほか、サッカーがいかに政治や経済に絡みとられたものであるかを教えてくれます。

「阿川佐和子のガハハのハ」

阿川佐和子著 文藝春秋 2001

阿川佐和子によるマルチナ・ヒンギスへのインタビューを収録。 ヒンギスはスロヴァキア第2の都市コシツェのうまれ。 3歳からテニスを始め、12歳で全仏ジュニアで優勝してから、数々の記録を打ち立てました。 このインタビューのときヒンギスは19歳。2000年の東レ・パンパシフィックオープンで、シングルス、ダブルスともに優勝した後の頃です。 話題はやはりテニスが中心ですが、阿川佐和子は、試合のときの精神状態や恋愛のこと、好きな食べ物のことなど、ヒンギスの人柄に迫るインタビューをくりひろげ、楽しませてくれます。

スロヴァキアと文学

小さな国ながら分割や統合を繰り返してきたスロヴァキア。 山地が多く農業がさかんな穏やかな風土とめまぐるしく変わる政治。 二つの側面を持つ国の特徴が文学にもあらわれています。

「時間と分」

アルフォンス・ベドナール著 栗栖継訳 恒文社 1978

1914年生まれのスロヴァキア人、ベドナールが書いたスロヴァキア国民蜂起と第2次世界大戦後のスターリン体制を題材にした小説。 スターリン批判の内容から1956年の発表後すぐに禁書となり復刊したのは8年後のことでした。 もともと6編の中編小説の連作集ですが、本書にはそのうちの3編(「揺籃」「時間と分」「建ちかけの家」)が収められています。

「ゾリ」

コラム・マッキャン著 栩木伸明訳 みすず書房 2008

スロヴァキアで生まれたロマ(ジプシー)の少女ゾリの生涯を描いた長編小説。 1930年代にファシストに家族を惨殺され、祖父とともに生き延びた少女は、ジプシーでは禁忌とされる読み書きをひそかに習い、詩の才能を開花させていく。 プロレタリア詩人として祭り上げられ、やがて姿を消したゾリの行く末を一人のジャーナリストが追う-。

激動の東西ヨーロッパの変遷を背景に、歴史に翻弄されたひとりの女の人生をあざやかに描いています。

「この世の美しきものすべて」

ヤロスラフ・サイフェルト著 飯島周 関根日出男共訳 恒文社 1998

1984年にチェコで初めてのノーベル文学賞を受賞した国民的詩人サイフェルトの回想記。 チェコスロヴァキアの波乱に富んだ20世紀を生きてきた詩人の生涯がみずみずしい文体で書かれています。 舞台のほとんどはサイフェルトの故郷プラハですが600人を超す登場人物の中にはスロヴァキアの詩人も多数含まれています。

チェコの作家たちがまだ祖国の草原をあてもなくさ迷っていた頃、つまり組織されていたといっても、チェコ作家組合のメンバーというだけであり、その組織もあまりにも漠然としていて、何らかの戦闘的行動を起こすには程遠いものだったからだが、そうした頃、スロヴァキアの作家たちはソ連の例にならい、西スロヴァキアのトレンチャンスケ・テプリツェ温泉での会議を招集した。 その目的は、自分たちの芸術的政治的計画と団結、最後に同業組合への参加を宣言するにあった。(pp.323-324)

「東欧怪談集」

沼野充義編 河出書房新社 1995

9カ国26編のアンソロジー。 スロヴァキアは3作品が収録されています。 「西方的な洗練された形式と、東方的などろどろした混沌のあわい」(編者によるあとがきより p.423)を感じさせる幻想的な作品集。 古典的傑作さえなかなか日本では翻訳がでない地域の趣味的な作品を原語から直接訳すことにこだわっています。

スロヴァキアの昔話

山岳地帯が広がるスロヴァキア。山間の村で語り継がれてきたお話には厳しい自然や動物たちとの共存が根付いています。

「12のつきのおくりもの」

内田莉莎子再話 丸木俊画 福音館書店 2006

寒い冬の日にスミレをつんでくるよう継母にいわれたマルーシカは雪深い森に向かいます。 こごえそうなマルーシカが見つけたのは、もえる赤い火。 そこには大きな焚き火をかこんだ12人の月の精がおり-。

この民話は、マルシャークの戯曲「森は生きている」の元になった話でもあります。 日本でもいろいろな題名で出版されていますので、スロヴァキアが舞台とは知らずに読んだこともある方も多いのではないでしょうか。

「でてきておひさま」

堀内路子再話 堀内誠一絵 福音館書店 2004

大きな黒雲が空を覆って三日もおひさまが出てきません。 そこでひよこたちは出会った人に尋ねながらおひさまを探しに出かけることにしました-。

イラストレーター堀内誠一夫妻唯一の合作絵本です。 始まりの灰色の空と、おひさまが出てきた時の輝きの対比が印象的です。

「白いお姫さま」

マリア・ジェリチェコワ著 中村祐子他訳 新読書社 1990

訳者がパリの街角で見かけたフランス語版の表紙の美しさにひかれ、5年がかりで翻訳した民話集。 作者のおばあさんが針仕事をしながら語ってくれたお話が24編収められている、挿絵の鮮やかな1冊です。

※関連書籍 「白いお姫さまをたずねて」 中村祐子著 新読書社 1992

「チェコスロバキアの民話」

大竹國弘編・訳 恒文社 1980

カレル・ヤロミール・エルベンとボジェナ・ニェムツォヴァーの作品を中心とした民話集。 1820年ウィーン生まれのニェムツォヴァーは結婚を機にチェコに移り住みました。 その後夫の仕事の関係でチェコやスロヴァキア、ハンガリーを転々としたためスロヴァキアが舞台の作品が多数あります。

「羊飼いと龍」「老犬と狼」といった題名からも分かるとおり山村をテーマにした話が中心です。