バラのまちだより No.32
「青いバラ」への挑戦、世界初の誕生へ
青いバラへの挑戦は、古くから多くの育種家が精力を注ぎ込みましたが、青や紫の花の色素デルフィニジンがバラの花弁にないため、青い品種はできませんでした。
1990年、遺伝子組換え技術を駆使して青いバラをつくろうとしたのが、日本のサントリーとオーストラリアのフロリジン社の研究チームです。
まず、ペチュニアから青色遺伝子を取出し試験を繰り返しました。青いカーネーション「ムーンダスト」の開発には成功しましたが、バラではなかなかうまくいきません。
紆余曲折の末、日豪で手分けして多種の青い花から青色遺伝子を取り、バラに順次入れることにしました。1996年になってパンジーの青色遺伝子を入れたバラの花色が変化してきました。
できるだけ青くなりそうなバラの品種を選んだり、赤い色素ができない工夫を行ったりした結果、いくつかの品種でデルフィニジンが総色素量の90%以上で、従来のバラにはない青紫色になった品種が誕生しました。
14年もの歳月をかけて研究を続けた結果、花色が今までのバラより青いこと、花弁にデルフィニジンが含まれていることから、ついに世界初の「青いバラの誕生」が認められました。2004年6月30日に発表され、「不可能が可能になった」と技術的にも高く評価されました。
参考資料
『秘密の花園』のバラとバーネット
風にバラの花が香る5月となりました。
ガーデニングの本場イギリスでも、これから徐々にバラの見頃を迎えます。そこで今回はイギリスの庭園を舞台にした物語をご紹介します。
『秘密の花園』は、1911年に出版されたフランシス・ホジソン・バーネットの代表作です。両親を亡くし、叔父であるクレイヴン氏に引き取られて、イギリスの荒野に建つ古い屋敷にやってきた少女メアリが、病弱な従兄弟コリン、田舎の少年ディコンとともに、打ち捨てられた庭を甦らせていく姿が描かれています。再生されていく庭の表現が実に美しいのですが、ここではバラに関する部分に注目して読んでみたいと思います。
秘密の庭の発見
屋敷には、誰も立ち入ることを許されない、十年間閉ざされた庭がありました。しかし、メアリは仲良くなったコマドリに導かれ、その鍵と扉を見つけてしまいます。
そこは、枯れかけていたにもかかわらず不思議に美しい庭でした。
「~ひとつにはつるバラが樹木の上を伸びていって、長いつるが垂れ下がり、軽いカーテンのように揺れていて、あちらこちらでたがいにからみあったり、遠くへ広がっている枝に巻きついたり、樹から樹へからみついて、美しい橋のようにつながっているからでした。」
メアリは野育ちのディコンに助けられ、こっそり庭の手入れを始めました。庭の秘密を共有することになったコリンも加わり、世話を続けていくうち、「秘密の花園」は色とりどりの花々があふれる美しい庭に変わっていきます。やせこけて不健康で、「つむじ曲がり」だったメアリも、病弱で青白く気難しかったコリンも、庭の再生とともに見違えるように健康になっていきました。
バラを愛した貴婦人
「あの方は、とても好いておられた場所に、バラをたくさん植えておられて、それはだいじにしておられた、まるでわが子のようにー というか、コマドリのようにな。バラの花にからだをかがめて、キスしておられるのを見たことがある。」
コリンの母は十年前、腰かけていたバラの古木の枝が折れた事故で亡くなりました。それ以来、庭は封印され、心を閉ざしたクレイヴン氏は息子のコリンにも会おうとせず、旅を続ける年月を過ごしていました。しかし、亡き妻の「庭にいますよ!」と呼ぶ不思議な声を聴いて、クレイヴン氏は屋敷に戻ってきます。
「遅咲きのつるバラが高いところにはい上がり、ぶら下がり、房になって咲いていて、太陽が黄色に色づきかけた木々の葉の色を濃く染めていたので、まるで樹木に囲まれた黄金の寺院のなかに立っているような感じがしました。」
胸に飛び込んできた息子は、まるで別人のように明るく生命力に満ちた姿でした。美しくも荘厳な輝きに満ちた庭の中、クレイヴン氏は自身の心、そしてコリンとの関係を再生することができたのです。
バーネットとバラ、そしてコマドリ
作者のバーネットは、庭づくりやバラをこよなく愛した人でした。土や風の豊かな薫りや春の芽吹きの美しい描写、また農作業の細かい記述からは、彼女の庭仕事に対する想いが伝わってきます。
コマドリはとても人懐っこい鳥で、庭仕事をしていると近寄ってくるそうですが、「秘密の花園」発見のきっかけを作ったコマドリも、バーネットが手塩にかけたバラ園で生まれ育った一羽のコマドリがモデルとなっています。つるバラのからむ古木の下で原稿を書くバーネット、その傍らで歌い、彼女の帽子に乗り、飾られたバラをつつき…。彼女の手からパンくずをついばむほど親しくなったとき、「秘密の花園」のアイデアが浮かんだといわれています。
コマドリや庭づくりのエピソードについては、「わたしのコマドリくん」や「庭にて」で詳しく書かれていますので、こちらもぜひご一読ください。
参考資料
- 『白い人びと-ほか短篇とエッセー-』より「わたしのコマドリくん」「庭にて」 フランシス・バーネット/[著] 中村妙子/訳 みすず書房 2013年
- 『『秘密の花園』ノート』梨木 香歩/著 岩波ブックレット 2010年
バラの花。枯れてきたら、どうしてますか?
みなさん、枯れかけたバラはどうしているでしょう?
ゴミ箱へ・・・なんてもったいないですよ。「ポプリ」としてもうひと働きしてもらいましょう。
「ポプリ」とは、花びら、ハーブ(香草)、エッセンシャル・オイル、保留剤などを混ぜ合わせ、熟成させたものです。いい香りです。お皿に盛ってインテリア芳香剤としたり、布袋に入れて匂い袋として使ったりします。
今回は「バラ」の「ドライポプリ」の簡単な作り方をご紹介します。
★材料
① 枯れ始めたバラ(完全に枯れてはいけません)
② 保留剤になるもの(シナモン、重曹、樹皮、種など)
③ エッセンシャル・オイル(お好みの香りを)
④ 密閉容器
★作り方
① 保留剤になるものを、すり鉢などを使い粉状にします。
② ①にエッセンシャル・オイルを入れてよくかき混ぜます。ペースト状になるぐらいが目安です。
③ よく乾燥したバラの花びらをボールにあけて、保留剤をふりかけながら、まんべんなく混ぜます。
④ ③を密閉容器にいれて、暗く涼しい場所で1~2ケ月ほど寝かせます。
⑤ お好きな器にいれて、出来上がり!