バラのまちだより No.17
サン・ジョルディの日
スペインのカタルーニャ地方では4月23日、男性が女性にバラを贈り、女性が男性に本を贈る習慣があります。この行事には次のようないわれがあります。
むかし、生け贄をもとめる凶暴なドラゴンが住みつき、人々を困らせていました。あるとき、生け贄を決めるくじに王女が当たってしまいます。王女がドラゴンに食べられようとしたその時、現れたのがサン・ジョルディという騎士でした。サン・ジョルディはドラゴンに勇敢に立ち向かい、勝利しました。倒れたドラゴンの血の中に咲いていたバラをサン・ジョルディは王女に贈りました。この伝説の騎士に倣い、男性は女性にバラを贈るようになりました。
女性が男性に本を贈るようになったのは、近代になって『ドン・キホーテ』の作者であるセルバンデスの誕生日に本を贈りあう習慣が生まれたからです。スペインを代表する文豪であるセルバンデスの誕生日は、奇しくも「サン・ジョルディの日」と同じ4月23日でした。現在、「サン・ジョルディの日」は、テレビや本で取り上げられるなど、カタルーニャのお祭りとして紹介されるようになりました。
参考文献
- 『カタルーニャを知るための50章』 立石 博高/編著 明石書店 より
- 『カタルーニャを知る事典』 平凡社新書 田澤 耕/著 平凡社 より
- 『愛の薔薇伝説 サン・ジョルディ物語』舟崎 克彦/文 ほるぷ出版 より
乙女にはバラが似合います
『花物語 上・下』 河出文庫 吉屋 信子/著 河出書房新社
「紅薔薇白薔薇」「黄薔薇」「白萩」「水仙」「あやめ」「桔梗」・・・。吉屋信子は少女たちのための短編小説に花の名前を冠し、『花物語』を編みました。
「紅薔薇白薔薇」はイタリア人のヴァイオリン教師が教え子の二人の少女を華やかな紅薔薇と凛とした白薔薇にたとえ、少女たちの友情が続くことを願う物語です。
「黄薔薇」では新任の女学校教師が黄薔薇に導かれるようにして教え子の女学生と親密になり、共に海外へ行く夢を抱きます。ところが女学生の母に懇願された教師は女学生に結婚をすすめ、一人アメリカにわたります。
対照的な二人の少女の幸せを願う「紅薔薇白薔薇」、若い教師の流転を描いた「黄薔薇」。対照的な読後感の物語をどうぞ。
『完本 乙女の港 少女の友コレクション』川端 康成/著 実業之日本社
川端康成が文を書き中原淳一が装幀を担当した『乙女の港』は、刊行された昭和初期、一大ブームとなりました。港町のミッションスクールを舞台に、新入生三千子と上級生洋子との交流を描いています。
物語は洋子が三千子に「私の花束」として3編の詩を贈ることからはじまります。その中の一編が「花薔薇」です。
わがうへにしもあらなくに/などかくおつるなみだぞも
ふみくだかれしはなさうび/よはなれのみのうきよかは 三千子にこの詩は難しくてわからないのですが、洋子の香り高い美しさは感じられたのでした。ほかに、小学校の女性教師が不思議な体験をする「薔薇の家」という短編がおさめられています。
☆『完本 乙女の港』には「完全復刻版」と「新装版」があります。
バラを守るために
春から夏にかけてはバラの生育期。健康なバラを育てるためには害虫対策が必要です。代表的な害虫をご紹介します。
アブラムシ
バラにつくものは緑色で体長2~4mm。春から秋にかけて活動します。葉やつぼみ、芽などから吸汁し植物を弱らせるだけでなく、ウィルスを媒介します。
対処法:太陽の反射光を嫌うので、アルミシートなどで飛来を防止することができます。また、黄色を好む性質があり、黄色の粘着板を使って捕獲することもできます。ヒラタアブやテントウムシといったアブラムシの天敵に悪影響のない薬剤を選び散布するのも有効です。
カイガラムシ
季節を問わず発生し、堅い殻を持ち生涯移動しないもの、足を持ち移動するものなどがいます。種類により植物の地上部や根に寄生し、放置すると植物が枯死することもあります。
対処法:枝が込み合って通風が悪くなっていると発生しやすい傾向にあります。剪定することで通風を確保しましょう。見つけたら葉や芽を傷つけないよう、歯ブラシなどでこするととれます。また、バラが休眠状態となる冬季にバラ用のマシン油乳剤を使うと除去できます。
参考文献
- 『野菜果樹草花庭木の病気と害虫』 根本 久/著 主婦の友社 より
- 『病害虫を防いで楽しいバラづくり』 長井 雄治/著 農山漁村文化協会 より
- 『バラ大百科 選ぶ、育てる、咲かせる』 上田 善弘/監修 日本放送出版協会 より
17号をお届けします!
バラといえば与野公園ですが、中央区役所の敷地内にも見事なバラが咲きます。図書館の帰りに立ち寄ってみては。