バラのまちだより No.2
野薔薇(シューベルト作曲 近藤朔風訳詩)
童は見たり 野中の薔薇
清らに咲ける その色愛でつ
あかず眺む 紅香う
野中の薔薇
手折りて行かん 野中の薔薇
手折らば手折れ 思出ぐさに
君を刺さん 紅香う
野中の薔薇
童は折りぬ 野中の薔薇
手折りてあわれ 清らの色香
永遠にあせぬ 紅香う
野中の薔薇
向田邦子と薔薇
向田邦子は「のばら」の歌の「のなかのばら」という歌詞をずっと「よなかのばら」と勘違いしていたという。 『夜中の薔薇』は、こうしたエピソードや幼い頃の思い出、父の思い出を綴ったエッセイ集。
バラにまつわるこんな本はいかがですか?
~薔薇戦争の昔~歴史の謎を紐解くミステリー~
- 「時の娘」 ジョセフィン・テイ作 小泉喜美子訳 早川書房
15世紀の昔。イギリスでは赤い薔薇の紋章のランカスター家と、白い薔薇の紋章のヨーク家が王位をめぐって争いを繰り広げていた。ヨーク家の最後の王、リチャード3世は、王位を奪うため、甥のまだ幼い王子たちを殺害するという残虐な行為を行った。
捜査中の事故で大怪我をし、退屈な入院生活を送るグラント警部は、お見舞いに友人が持ってきたリチャード3世の肖像画をみて首をかしげる。警察官としての長年の勘から、とてもこの人物が人殺しをするとは思えなかった。警部は、歴史研究生のキャラダインとともに文献をじっくりと読み、警察官としての視点でこの事件を推理する。そこには、驚くべき真実が隠されていた…。
グラント警部が病院のベッドの上で事件を推理する、異色ミステリー。
~バラに魅せられ、描きつづけた画家の一生~
- 「バラの画家ルドゥテ」 シャルル・レジェ著 高橋達明訳 八坂書房
フランス革命・ナポレオンの台頭・ブルボン王朝の復古など、フランス激動の時代に花に魅せられ、描きつづけたルドゥテは「バラの画家」として名高い。その作品の豪華さ・美しさは、いまも色あせない。
マリー・アントワネットの蒐集付画家として絵筆をふるい、革命後はナポレオン皇后のジョセフィーヌから手厚い保護を受けたルドゥテ。花好きのジョセフィーヌがマルメゾンの館を購入し、世界各地から珍しい花を取り寄せ、有名な植物園をつくると、そのコレクションを丹念に描き、『バラ図譜』として1817年から1824年の間に出版する。その後も、ジョゼフィーヌがナポレオンと離婚後に皇帝妃となったマリー・ルイーズから保護をうけ、宮廷画家として活躍したという。
果たしてこの激動の時代、彼はどのように生き、後世まで残る作品を世に送り出したか?100点以上の美しい作品とともにルドゥテの人生を綴る書。
青い薔薇 白い薔薇
ばら色といえば、赤に近いえんじのような色ですが、薔薇にはクリームやピンクなど、いろいろな色の花が咲きます。今回は青と白をとりあげてみました。
- 「青いバラ」 最相葉月著 小学館
英語で「青い薔薇」とは「不可能」のこと。いにしえから、何人もの人が青い薔薇の育種を試みてきたが、ラベンダー色までで、ほんとうに青と呼べる薔薇はまだ作られていない。
「青い薔薇ができたとして、それを美しいと思いますか?」 育種家・鈴木省三(せいぞう)は言った。100種以上新種の薔薇を作りだして世界にその名を知られ、外国ではミスター・ローズといわれている人だ。著者は鈴木省三のもとに何度も通い話を聞く。薔薇のこと、省三自身のこと、そして青い薔薇のこと…。
何人もの育種家が長い年月をかけて達成できなかった「青い薔薇」が、今ではバイオ技術で作れるところまできている。はたして、バイオ技術で作った青い薔薇は本当に美しいのだろうか?
- 「ゾフィー21歳 ヒトラーに抗した白いバラ」 ヘルマン・フィンケ著 草風館
第二次世界大戦ナチスドイツの時代、ドイツ国内にはいくつもの抵抗運動があった。ゾフィーが所属した「白バラ」もそのひとつだ。ナチスを非難する内容の宣伝ビラである「白バラ」を配るなど、抵抗運動を続けた。ゾフィー、兄のハンスはじめ多くの人々が逮捕され処刑された。ゾフィーは21歳だった。
「白バラ」の名前の由来ははっきりしないが、白は所属機関名が空白、薔薇は「沈黙と秘密保持のシンボル」だったからという説もある。たくさんの血に染まった「白バラ」は今もドイツに生き続けているということだ。